J.S.バッハのフランス組曲です。ピアノ演奏はヴォルフガング・リュプザム。
クセが強めです。チェンバロなら気にならないのかもしれませんが、ピアノで聴くと驚くほどの個性強さ。1番の第1曲冒頭から、すごいタメタメで入って、のたりのたりと揺れながら装飾音符が華々しい。リピートの1回目と2回目で弾き方を変えています。古式ゆかしい弾き方をピアノで、ということでしょうか。好き嫌いが分かれるところでしょうが、私はどうも好きになれません。
気分を変えて組曲を構成する各舞曲について調べてみました。アルマンドもクーラントもダンスミュージックです。昔の人はこれで踊っていたのです。バッハのこの曲で踊っていたかどうかは不明です。この曲は鑑賞用でしょうか。
1番はアルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエット、ジーグ。2番はアルマンド、クーラント、サラバンド、エアが入って、メヌエット、ジーグです。
アルマンドは「ほどよい落ち着きをもった素朴な踊り」「あなたはご婦人の手をとって立ち、ほかの人たちもそれぞれご婦人を伴ってあなたの後ろに並びます。そして全員同じように前進したり時に応じて後退したりします。」だそうです。広間の端まで行ったら、向きを変えて踊り続ければ、後ろの列もぞろぞろと続きます。音楽が終われば、手をとったご婦人と歓談します。「若者たちは時々、アルマンドを踊りながらほかの踊り手の相手のご婦人をその手から奪い取ってしまうことがあります。」おだやかではありません。案の定、争いになるので、著者はこのようなことに賛成しかねます。著者とはトワノ・アルボー。「オルケゾグラフィ」から引用しました。(トワノ・アルボー. オルケゾグラフィ 全訳と理解のための手引き. 今谷和徳、中村好男、服部雅好編著. 古典舞踊研究会原書講読会訳. 道和書院, 2020)
一読しただけではどのような踊りかはわかりませんが、バッハの時代にはアルマンドは器楽曲として発展していったようです。
先ほど引用したオルケゾグラフィですが、16世紀のダンス指南書で面白いです。まずイラストの人物絵がかわいい。踊り方については省略しますが、クーラントの部分もここで少し引用します。「---3人目の踊り手が戻ってきたら、1人目の男性が跳びはねながら進み出て、ショースを引っ張り上げたり塵を払ったり、シャツをきちんと整えたりするなど、恋する者のしぐさをいくつもしながら、相手の女性を言わば求めようとするのです」要するに恋の駆け引きをしながらダンスするわけですね。バッハのこのクーラントは洗練されすぎて、もともとそんなシチュエーションで踊るダンスだったことなどには気づかないほどです。
NAXOS 8.550709 |
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