2022年8月21日日曜日

プロコフィエフのピアノ協奏曲全集 pf. V. アシュケナージ

 プロコフィエフのピアノ協奏曲全集。Pf. ヴラジーミル・アシュケナージ,

プロコフィエフは未来から来た作曲家だと思う。何百年先から来たのかは知らないが、当時から100年ほど経った現代でも彼の音楽を未来的だと思うのだから、相当先から来たに違いない。

ピアノ協奏曲第1番は、うっかりしていると単一楽章と勘違いしそうな三楽章構成。秘密基地が徐々に地上に現れたかと思ったら、飛行部隊がヒュンヒュン飛んでいくような冒頭の第1楽章。未来ですね。そして基地から眺める夕暮れ、空が茜色から紺碧に代わっていく時間のような美しい2楽章。基地の高層階から眺めるようなクールな美しさがたまりません。そうこうしているうちに再び1楽章の冒頭のテーマの再来です。3楽章は宇宙に向けての出発を着々と準備し、最後は遠ざかる地上を眺めるような気持にさせられます。

発表当時、物議を醸したという第2番。これはもう、別な星の物語というか、未来のお話というか、いまだかつて経験したことのないような音楽を聴かされて、信じるか信じないか、ということでしょうか。今聴いても、これはどこの音楽だろうと思うことがあります。ロシアでもなくソ連でもなく「プロコフィエフ」なんですよね。特に第3楽章のギザギザ感がたまりません。巨大なギザギザが転がり回るようです。それでいて管の調べにピアノがグリッサンドで伴奏を入れる部分が心持ち滑らかでいいですね。これを聴くといつもブルリュークの「Advent of Spring and Summer」という絵画を思い浮かべます。もっともっと聴きたいですが、演奏会への登場頻度では3番に負けているようですね。

5曲のなかで一番有名なのは第3番でしょうか。メロディがいいから? 曲の長さが丁度良いから? 確かに3番は大好きですし、素晴らしいのはわかっていますが、「プロコフィエフのピアノ協奏曲」と言われると何故「3番」になるのか、「2番」じゃだめですか。プロコフィエフにしては予定調和されている感じの曲だから? 私は2番が1番だと言いたい!

左手のための第4番。これ左手だけで弾くのは相当難しそうです。譜面を見ていないので詳しいことはわかりませんが、音を聴いているだけでも、いかにも難しそう。でも曲調はマイルドなプロコフィエフといった感。

第5番は作曲家自身が「超難曲」と言ったとか。「普通」の曲でも十分難しいのに、「超難曲」と言われたら「超超難曲」ということでしょうか。難しそうなパッセージの連続に耳を奪われますが、第4楽章ラルゲットの寒々とした歌がすばらしいです。弦のユニゾンで高音が伸びる中をピアノが潜り抜けるように鳴っている部分が特に美しいです。

LONDON F50L-29139/40
Prokofiev:Piano Concertos (complete)
Ashkenazy/London Symphony/Previn



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