ピアノ協奏曲
破壊力のあるイメージのゴロヴァノフと、非常に繊細で洗練されたイメージのネイガウスがタッグを組んだら、こういう演奏になるのだね。ぐいぐいと引っ張るゴロヴァノフに、ずんずんと付いて行くネイガウス。
超絶技巧の持ち主ではないのだろうけれど、非常に繊細で抒情的で、それでいてクールなイメージをネイガウスに持っている私としては、大ホールで大勢の観客の前でガンガン弾きまくるネイガウスが想像できない。目の前で見たかったなあ。
ミスタッチも多いが、機械みたいに弾く昨今のピアニストとは違った、凛とした上品さが彼の持ち味なのだよ。
スクリャービンのピアノ協奏曲の演奏の中で、私としては一押しの最高の演奏。
詩曲Op.32
何が良いって第一曲の、構成としてはABA'B'のBとB'の部分。そう、inaferandoの指示がある部分の繊細さと官能がたまりません。その指の動きは一体、どうなっているのですか、と弾いている傍でなめるように見たいものだ。真っ白な羽毛がひらひらと宙を舞い降りてくるような、弾く人によっては、もう少し硬質のきらきらしたダイヤモンドダストが舞うような感じにも聴こえるが、ネイガウスの場合は間違いなく、羽毛のような柔らかくふわりとした感じ。包まれるとうっとりとするような…。
幻想曲Op.28
協奏曲のところでネイガウスを「超絶技巧の持ち主ではないと思う」ように書いたが、それは間違い。超絶技巧を駆使しているように聞こえないところが、本当の超絶技巧の持ち主だと思う。何気なく聴いた曲、その楽譜を見てびっくり!ということがあるものだ。
この曲と演奏も然り。彼は恐るべき魔術の持ち主なのだ。スクリャービンの甘い第2メロディにうっとりして、ついこの曲を弾きたい衝動に駆られるが、楽譜を見て愕然とする。難しいではないか!
ミスタッチも多いが、そんなことはどうでもいい。とにかく、心をわしづかみにされるような、せつないような、そんな気持ちにさせられる。それでいて甘さに溺れるわけでない、クールさを秘めたところがすばらしい。
RD CD 15 004 |
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