ガヴリール・ポポフの交響曲1番と2番。ロシアンアヴァンギャルドに分類される1番と、ソ連体制から批判を受けて少し体制寄りな作りの2番です。
交響曲第1番は6年かけて作られました。ポポフ24歳から30歳。若々しく勢いがあり、巨大な危険生物が徐々に立ち上がっていくような、混沌から一本の道筋が見えていくようなエネルギーに満ちた第1楽章は、Allegro energicoだけあって20分超える楽章のほとんどがパワフル。ターカターターのリズムで繰り返されるテーマが印象的です。第2楽章は一転してLargoでなおかつcantabileで、抒情的なメロディで始まりますが、徐々に不穏なメロディが差し挟まり、破壊の合間のほんの一息的な静けさです。それも高音で美しいメロディが鳴るのに対して、低音の下降していくコードが作る和声が徐々に不安を掻き立てます。ポポフは映画音楽も手掛けたようですが、この曲も非常に抒情的かつ叙景的です。第1楽章で暴れた大生物が再び顔を出すようなフレーズを所々にちりばめ、それでもcantabileに留まろうとして終わります。第3楽章はScherzoの指示ですが、3拍子ではないです。2拍子の行進曲です。リズムが特徴的でシンコペーションや打楽器の使い方がハチャトゥリアンぽさを感じます(同時代人ですね)。ひたすら頂点目指してシンコペーションで進んでいきます。時限爆弾の残り時間が少なくなってきたような混乱のような、すべてが再び混沌に戻っていくような時を超えると、木製打楽器が印象深く鳴り響く中、終わりがドカンと来ます。
ひたすらかっこいいです。私の好きな交響曲の1つです。
交響曲第1番のやる気に満ちたポポフから見ると、第2番は大分腰が引けているような気がするのですが、第1楽章の冒頭が緩やかだからかもしれません。それでも"Motherland"という副題がついているあたり、しかも1943年の作であることを考えると、ずいぶん体制からの目を気にした曲だと思います。感情に直接訴えてくるようなわかりやすい民族調のテーマを弦がひしひしと歌い上げます。と思っていたら急にピオネールの劇でも見せられたような気になるような第2楽章が、きらきらと人工的な笑顔を見せて始まるのです。もうびっくり。体制側のやつら、こんな曲をポポフに書かせて満足して貴賓席で拍手してるなら腐ってるゾ。いや、ポポフはきっちり仕事しています。ちっとも悪い曲ではありませんが、1番を聴いた後だと居心地の悪さを感じるのは否めないです。そして第3楽章。これこそ、ポポフがこの第2番で一番言いたかった部分ではないでしょうか。この楽章があるからこその第2番です。静けさから始まり、クライマックスは1か所。そしてきれいな弧を描いて再び静けさに沈むまで13分、忍耐強く高テンションを維持し続け、見事な造形を聴かせてくれます。主に低音の弦がメロディを歌い、そこに最低音(コントラバス)のピチカートが添えられ、徐々に高音の弦へと主役が移って心が鳴って叫んでいるようです。ニ長調のクライマックスでは打楽器がさらに気分を盛り上げます。ニ長調ですが、油断するとすぐに短調に戻り、ゆらぎながらピチカートに乗ってまたゆっくりと、少しずつ減衰していき、最初の静けさに戻っていくのです。弦の響きが印象的な楽章。第4楽章はまたしてもわかりやすいメロディ。クライマックスで単調で前時代的なメロディがこれでもかとかき鳴らされます。それにしても、ここの部分は何度聴いても日本の東映などの時代劇映画を思い浮かべてしまう。片岡千恵蔵とかが大見得を切っていそうな。
OCD 576 Symphonies Nos. 1 & 2 Gavriil Popov |
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